助成金の対象となる企業の共通点

「自社は助成金の対象になるのだろうか」「申請しても受給できないのでは」と不安を感じている経営者の方は多いのではないでしょうか。助成金には様々な種類があり、それぞれ対象企業の条件が異なるため、自社が該当するか判断が難しいのが実情です。しかし、助成金の対象となる企業には共通点があります。この記事では、助成金を受給できる企業の基本要件から、受給しやすい企業の特徴、さらには対象企業でも不支給になる落とし穴まで、社労士の視点から詳しく解説します。

助成金の対象となる企業の3つの基本要件

助成金を受給するためには、まず基本的な要件を満たしている必要があります。ここでは、多くの助成金に共通する3つの基本要件について説明します。

雇用保険適用事業所であること

雇用関係助成金の受給には、雇用保険適用事業所であることが大前提となります。雇用保険適用事業所とは、従業員を1人でも雇用している事業所のことを指します。ただし、週の所定労働時間が20時間未満の短時間労働者のみを雇用している場合は、適用事業所とならないケースもあります。

雇用保険の適用事業所として認められるには、労働基準監督署とハローワークに必要な届出を行い、雇用保険に加入していることが条件です。個人事業主や役員のみで事業を行っている場合は、雇用保険の適用事業所とならないため、雇用関係助成金の対象外となります。

労働関連法令を遵守していること

労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法などの労働関連法令を遵守していることも、助成金受給の必須条件です。厚生労働省が管轄する助成金は、適正な労働環境を整備する事業主を支援することを目的としているため、法令違反がある企業は対象外となります。

具体的には、以下のような法令違反があると助成金を受給できません。

  • 労働基準法違反(未払い残業代、違法な長時間労働など)
  • 最低賃金法違反(最低賃金を下回る賃金設定)
  • 労働安全衛生法違反(安全配慮義務違反など)
  • 労働保険料の滞納

過去1年以内に労働基準監督署から是正勧告を受けている場合や、重大な労働関連法令違反で送検されている場合は、助成金の申請自体ができないケースもあります。

助成金受給しやすい企業の3つの共通点

基本要件を満たしていても、すべての企業が同じように助成金を受給できるわけではありません。受給しやすい企業には、以下のような共通点があります。

就業規則や賃金台帳などの労務書類を整備している

助成金の審査では、就業規則、賃金台帳、出勤簿、労働者名簿などの労務書類の提出が求められます。これらの書類が整備されていない、または内容に不備があると、審査を通過できません。

実際の相談事例として、製造業のA社では、キャリアアップ助成金を申請したものの、就業規則に正社員転換の規定がなく、賃金台帳の記載も不十分だったため、不支給となったケースがあります。A社は従業員30名規模でしたが、労務管理が十分でなく、書類の整備に時間がかかりました。結局、社労士のサポートを受けて書類を整備し、再申請でようやく受給できました。

特に従業員が10名以上の企業では、就業規則の作成と労働基準監督署への届出が義務付けられています。助成金申請を検討する際は、まず労務書類の整備状況を確認することが重要です。

労働保険料を滞納していない

労働保険料(労災保険料・雇用保険料)の滞納がないことは、助成金受給の絶対条件です。申請時点で労働保険料に未納があると、審査の段階で即座に不支給となります。

労働保険料は年度更新の際に納付しますが、資金繰りが厳しい時期に納付が遅れてしまうケースがあります。助成金を申請する予定がある場合は、申請前に納付状況を確認し、未納がある場合は速やかに納付しておく必要があります。

納付状況は、労働局や労働基準監督署で確認できます。また、労働保険料の延滞金が発生している場合も、完納してから申請することが求められます。

過去に労基署の是正勧告を受けていない

過去に労働基準監督署から是正勧告を受けた履歴があると、助成金の審査に影響を与える可能性があります。特に申請前1年以内の是正勧告は、審査で不利に働くことが多いです。

是正勧告を受けた場合でも、すぐに改善措置を講じ、是正報告書を提出していれば、一定期間(通常6ヶ月から1年)経過後に申請できるケースもあります。ただし、重大な法令違反や悪質な違反の場合は、より長期間申請できないこともあるため、注意が必要です。

業種・規模別に見る助成金の対象範囲

助成金の多くは、中小企業を主な対象としています。ここでは、中小企業の定義と対象範囲について詳しく見ていきます。

中小企業の定義と対象業種

厚生労働省の助成金における中小企業の定義は、中小企業基本法に基づいています。業種によって資本金または従業員数の基準が異なります。

業種 資本金 従業員数
製造業・建設業・運輸業等 3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
小売業 5,000万円以下 50人以下

資本金または従業員数のいずれかが基準以下であれば、中小企業として扱われます。ほとんどの雇用関係助成金は、中小企業の方が助成額が高く設定されているため、自社が中小企業に該当するか確認することが重要です。

対象外となる業種・事業

助成金の対象となる業種は幅広いですが、風俗営業等の一部業種は対象外となります。具体的には以下のような業種です。

  • 風俗営業法に定める風俗営業(キャバレー、ナイトクラブなど)
  • 性風俗関連特殊営業
  • 接客業務受託営業(いわゆる派遣型風俗)

また、暴力団との関係が疑われる事業所や、過去に助成金の不正受給で処分を受けた事業所も対象外となります。不正受給が発覚した場合は、3年から5年間、すべての助成金が申請できなくなるため、適正な申請を心がける必要があります。

【社労士が解説】対象企業でも不支給になる2つの落とし穴

基本要件を満たし、中小企業にも該当していても、以下のような落とし穴があると不支給になる可能性があります。社労士として多くの相談を受ける中で、特に注意が必要なポイントを解説します。

申請前6ヶ月以内の解雇・退職勧奨

雇用関係助成金は雇用の維持・安定を目的としているため、申請前6ヶ月以内に解雇や退職勧奨を行っている場合は、原則として受給できません。これは、助成金を受け取りながら雇用を削減することを防ぐためです。

ここで注意すべきは、「退職勧奨」の範囲です。明示的に退職を促した場合だけでなく、以下のようなケースも退職勧奨とみなされる可能性があります。

  • 労働条件の大幅な引き下げによる自主退職の誘導
  • 配置転換や転勤命令による退職の促し
  • 執拗な面談による退職の強要

自己都合退職であっても、実質的に退職勧奨があったと判断されれば不支給となります。助成金を申請する予定がある場合は、雇用の安定に十分配慮する必要があります。

申請期限や計画届の提出漏れ

助成金には厳格な申請期限や手続きの順序が定められています。期限を1日でも過ぎると受給できないケースがほとんどです。

特に多いのが、計画届の提出漏れです。多くの助成金では、取り組みを実施する前に「計画届」を提出する必要があります。例えば、キャリアアップ助成金では、正社員転換を実施する前に「キャリアアップ計画」を提出しなければなりません。実施後に計画届を出しても認められないため、スケジュール管理が重要です。

また、支給申請の期限も厳守する必要があります。一般的に、取り組み完了後2ヶ月以内などの期限が設定されていますが、助成金の種類によって異なるため、必ず確認しましょう。

まとめ

助成金の対象となる企業には、雇用保険適用事業所であることや労働関連法令の遵守といった基本要件があります。さらに、労務書類の整備、労働保険料の納付、法令違反歴がないことなどの共通点を持つ企業が受給しやすい傾向にあります。重要なポイントは以下の3つです。

  • 基本要件の確認:雇用保険加入と法令遵守が大前提
  • 労務管理の整備:書類の準備と保険料の納付状況を確認
  • 手続きの期限厳守:計画届や申請期限を逃さない

自社が助成金の対象となるか判断する際は、これらの要件を満たしているか確認することが第一歩です。しかし、助成金の種類は多岐にわたり、それぞれ細かい要件が異なるため、自己判断でのリスクもあります。申請を検討される場合は、助成金に詳しい社労士に相談することをお勧めします。労務に関するご相談はSalt社会保険労務士法人までお気軽にお問い合わせください。初回相談は無料で承っております。

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