欠勤控除・遅刻控除の正しい計算

従業員の欠勤や遅刻があった際、給与からいくら控除すればよいのか迷われる経営者や人事担当者は少なくありません。実際、控除計算のミスが原因で「控除額が多すぎる」「計算根拠が不明確」といった労使トラブルに発展するケースも見受けられます。この記事では、欠勤控除・遅刻控除の正しい計算方法と、トラブルを防ぐための重要なポイントを詳しく解説します。

欠勤控除・遅刻控除の基本ルールと法的根拠

給与計算における控除の基本を理解することは、適切な労務管理の第一歩です。まずは法的な考え方と控除が認められる条件を確認しましょう。

ノーワークノーペイの原則とは

ノーワークノーペイの原則とは、労働者が労働を提供しなかった時間や日数については、使用者は賃金を支払う義務がないという考え方です。労働基準法では「賃金は、労働の対償として支払われるもの」と定義されており、労働の提供がなければ賃金支払義務も発生しないのが原則となっています。

この原則に基づき、欠勤や遅刻があった場合、その分の賃金を控除することは違法ではありません。ただし、控除を行うためには以下の条件を満たす必要があります。

  • 就業規則や労働契約に控除に関する規定が明記されている
  • 控除額の計算方法が合理的で明確である
  • 控除する金額が実際に労働しなかった分に対応している

これらの条件を満たさない控除は、後述する違法な控除に該当する可能性があります。

控除が違法になる2つのケース

適法な欠勤控除と違法な控除には明確な境界線があります。以下の2つのケースは違法と判断される可能性が高いため注意が必要です。

1. 懲罰的控除

欠勤や遅刻に対するペナルティとして、実際の労働時間に対応する額を超えて控除することは違法です。例えば、1時間の遅刻に対して2時間分の賃金を控除する、欠勤1日に対して2日分を控除するといった行為は、労働基準法第91条の「制裁規定の制限」に抵触する可能性があります。

減給の制裁を行う場合でも、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならず、総額が一賃金支払期における賃金総額の10分の1を超えてはならないという制限があります。

2. 全額控除(皆勤手当の不支給を含む)

1回の遅刻や欠勤で月給の全額または大部分を控除することは明らかに違法です。また、皆勤手当などの支給要件として「遅刻・欠勤が一切ない」と定めることは可能ですが、その金額が基本給に比べて極端に高額な場合、実質的な懲罰的控除とみなされることがあります。

厚生労働省の指導では、皆勤手当は基本給の数パーセント程度が適正とされており、過度に高額な設定は避けるべきとされています。

欠勤控除の正しい計算方法【2パターン】

欠勤控除の計算方法は雇用形態によって異なります。ここでは代表的な2つのパターンを具体例とともに解説します。

月給制の欠勤控除計算式

完全月給制の場合、欠勤控除は以下の計算式で求めます。

欠勤控除額 = 月給 ÷ 月平均所定労働日数 × 欠勤日数

ここで重要なのが「月平均所定労働日数」の算出方法です。これは年間の所定労働日数を12ヶ月で割って求めます。

計算例

  • 月給:30万円
  • 年間所定労働日数:245日(週休2日制)
  • 月平均所定労働日数:245日÷12ヶ月≒20.4日
  • 欠勤日数:2日

欠勤控除額 = 30万円 ÷ 20.4日 × 2日 = 29,412円

この方法では、祝日や休日の多い月と少ない月で不公平が生じないよう、年間平均で計算することがポイントです。就業規則には「年間所定労働日数を12で除した日数を基準とする」と明記しておくことが望ましいでしょう。

日給月給制の計算方法

日給月給制とは、月給として定められた額から実際の欠勤日数分を控除する方式です。計算は比較的シンプルです。

欠勤控除額 = 日給 × 欠勤日数

日給の設定方法は企業によって異なりますが、一般的には以下のいずれかの方法が用いられます。

  1. 月給を月の所定労働日数で除した額
  2. 月給を月平均所定労働日数で除した額

計算例

  • 月給:25万円
  • 当月の所定労働日数:21日
  • 日給:25万円÷21日≒11,905円
  • 欠勤日数:1日

欠勤控除額 = 11,905円 × 1日 = 11,905円

日給月給制の場合、月によって所定労働日数が変動するため、同じ1日の欠勤でも控除額が異なることになります。この点を従業員に事前に説明しておくことがトラブル予防につながります。

遅刻・早退控除の計算方法と注意点

遅刻や早退の場合は、時間単位での控除計算が必要になります。正確な計算方法と端数処理のルールを理解しましょう。

時間単位の控除計算式

遅刻・早退の控除額は、1時間あたりの賃金を求めてから計算します。

1時間あたり賃金 = 月給 ÷ 月平均所定労働時間

遅刻・早退控除額 = 1時間あたり賃金 × 遅刻・早退時間

月平均所定労働時間は、年間所定労働時間を12ヶ月で割って算出します。

計算例

  • 月給:28万円
  • 1日の所定労働時間:8時間
  • 年間所定労働日数:245日
  • 年間所定労働時間:245日×8時間=1,960時間
  • 月平均所定労働時間:1,960時間÷12ヶ月≒163.3時間
  • 遅刻時間:1時間30分(1.5時間)

1時間あたり賃金 = 28万円 ÷ 163.3時間 ≒ 1,715円

遅刻控除額 = 1,715円 × 1.5時間 = 2,572円

この方法により、月による労働時間の変動に左右されない公平な控除が可能になります。

端数処理のルール

控除額の計算で端数が生じた場合、その処理方法にも一定のルールがあります。労働者に不利な処理は避けるべきとされています。

適法とされる端数処理

  • 50銭未満切り捨て、50銭以上1円未満切り上げ(四捨五入)
  • 端数を全て切り捨て(労働者有利)

違法となる可能性がある端数処理

  • 端数を全て切り上げ(労働者不利)
  • 恣意的な処理(月によって方法を変える等)

また、遅刻時間そのものの端数処理についても注意が必要です。5分の遅刻を15分として計算するなど、実際より長く計算することは違法です。ただし、タイムカードの打刻を15分単位で管理している場合でも、賃金計算は実際の遅刻時間で行う必要があります。

控除計算でよくある2つの間違い

実務で見られる誤った控除計算のパターンを知り、同じミスを防ぎましょう。

祝日・休日を含めた計算

最も多い間違いが、暦日数(カレンダーの日数)を基準に控除額を計算してしまうことです。

誤った計算例

  • 月給30万円÷30日(その月の暦日数)×欠勤日数

この方法では、もともと労働義務のない休日も含めて計算してしまうため、控除額が不当に少なくなります。正しくは前述のとおり、月平均所定労働日数または当月の所定労働日数を基準とすべきです。

所定労働日数の正しい数え方

  • 週休日(土日等)は含めない
  • 会社が定めた休日(祝日を休日とする場合)は含めない
  • 年末年始休暇など特別休暇は含めない
  • 有給休暇取得日は所定労働日としてカウント(欠勤ではない)

就業規則や給与規程に、所定労働日数の定義を明確に記載しておくことで、このような誤りを防ぐことができます。

残業代との関係

欠勤や遅刻があった月に残業があった場合、控除計算と残業代計算の関係性を正しく理解する必要があります。

よくある誤解

「遅刻2時間分を控除して、同日に2時間残業したから差し引きゼロ」という考え方は誤りです。遅刻による控除と残業代の支払いは別々に計算すべきものです。

正しい処理方法

  1. 遅刻2時間分の賃金を控除する
  2. 残業2時間分の賃金を割増率(通常25%以上)を適用して支払う

計算例

  • 1時間あたり賃金:2,000円
  • 遅刻2時間:2,000円×2時間=4,000円を控除
  • 残業2時間:2,000円×1.25×2時間=5,000円を支払
  • 差引:1,000円のプラス

また、欠勤控除後の賃金を基に残業代を計算するのも誤りです。残業代の基礎となる賃金は、控除前の本来の賃金額で計算する必要があります。

まとめ

この記事では、欠勤控除・遅刻控除の正しい計算方法について解説しました。重要なポイントは以下の3つです。

  • ノーワークノーペイの原則:労働提供がない分の賃金控除は適法だが、就業規則への明記と合理的な計算方法が必須
  • 月平均所定労働日数での計算:暦日数ではなく、年間の所定労働日数を12で除した日数を基準とすることで公平な控除が可能
  • 懲罰的控除の禁止:実際の欠勤・遅刻時間を超える控除や、過度な皆勤手当の設定は違法となる可能性がある

欠勤控除・遅刻控除の計算は、一見単純に見えて実は複雑な論点が多く含まれています。計算ミスは従業員との信頼関係を損なうだけでなく、労働基準監督署からの是正勧告につながることもあります。就業規則に控除の計算方法を明確に定め、従業員に十分説明することが、トラブル予防の第一歩となるでしょう。

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