絶対的必要記載事項とは?企業が必ず整備する内容

就業規則の作成や見直しを検討されている経営者や人事担当者の方にとって、「何を記載すれば法律上問題ないのか」という疑問は非常に重要です。労働基準法では、就業規則に必ず記載しなければならない項目として「絶対的必要記載事項」が定められています。この記事では、絶対的必要記載事項の具体的な内容から記載漏れのリスク、そして適切な対応策まで詳しく解説します。就業規則の作成義務がある企業は、ぜひ最後までお読みください。

絶対的必要記載事項とは何か

絶対的必要記載事項とは、就業規則を作成する際に法律で必ず記載することが義務付けられている項目のことです。ここでは、その法的根拠と相対的必要記載事項との違いについて説明します。

労働基準法89条で定められた必須項目

絶対的必要記載事項は、労働基準法第89条に明確に規定されています。この条文では、常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署長に届け出なければならないとされています。

労働基準法第89条では、以下の事項について就業規則に必ず記載することが求められています。

  • 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて交替に就業させる場合における就業時転換に関する事項
  • 賃金(臨時の賃金等を除く)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
  • 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

これらの項目は、企業にその制度があるかどうかに関わらず、就業規則を作成する際には必ず記載しなければならないとされています。

また、労働基準法第120条では、この義務に違反した場合、30万円以下の罰金に処せられる可能性があると定められています。単なる形式的な義務ではなく、罰則を伴う重要な法的義務であることを認識しておく必要があります。

相対的必要記載事項との違い

就業規則に記載すべき事項には、絶対的必要記載事項のほかに「相対的必要記載事項」と呼ばれるものがあります。この2つの違いを理解することは、適切な就業規則を作成するうえで重要です。

絶対的必要記載事項は、制度の有無に関わらず必ず記載しなければならない項目です。たとえば「退職に関する事項」は、どの企業でも労働者が退職することはあり得るため、必ず規定する必要があります。

一方、相対的必要記載事項は、企業にその制度がある場合に限り記載義務が生じる項目です。たとえば退職金制度や賞与、安全衛生に関する事項などがこれに該当します。退職金制度を設けていない企業であれば、就業規則に退職金の規定を設ける必要はありません。

区分 記載義務 具体例
絶対的必要記載事項 必ず記載 労働時間、賃金、退職に関する事項
相対的必要記載事項 制度がある場合のみ記載 退職金、賞与、安全衛生、表彰・制裁

実際に当事務所で顧問先企業の就業規則を確認した際、退職金制度は設けていないものの、過去に使用していた就業規則の雛形に退職金の規定が残っていたケースがありました。このような場合、従業員から「就業規則に書いてある以上、退職金を支払うべきだ」と主張される可能性があります。相対的必要記載事項については、自社の実態に合わせた適切な記載が求められます。

3つの絶対的必要記載事項の具体的内容

ここでは、労働基準法第89条で定められた絶対的必要記載事項について、それぞれ具体的に解説します。どの項目も企業運営において不可欠な内容ですので、自社の就業規則と照らし合わせながら確認してください。

労働時間・休憩・休日に関する事項

労働時間に関する規定は、従業員の働き方の基本となる最も重要な項目の一つです。具体的には以下の内容を明記する必要があります。

始業時刻と終業時刻については、「午前9時から午後6時まで(休憩時間1時間を含む)」というように明確に定めます。フレックスタイム制を導入している場合は、コアタイムやフレキシブルタイムの時間帯も記載が必要です。

休憩時間は、労働基準法で労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えることが義務付けられています。休憩時間の長さと取得時間帯を明記してください。

休日については、法定休日(週1日または4週4日)を含めた休日の日数や曜日を定めます。「毎週土曜日及び日曜日」「日曜日及び会社が指定する日」などと記載します。

休暇では、年次有給休暇の付与日数や取得方法、時間単位年休を導入している場合はその旨も記載します。また、慶弔休暇など法定外の特別休暇を設けている場合も、この項目で規定することが一般的です。

交代制勤務を採用している企業の場合は、就業時転換(シフト変更)に関する事項も記載が必要です。たとえば「3交代制とし、1週間ごとにローテーションする」「シフトの変更は7日前までに通知する」といった内容を明記します。

賃金の決定・計算・支払方法に関する事項

賃金に関する規定は、労働者にとって最も関心が高い項目であり、トラブルの原因となりやすい部分でもあります。賃金の透明性を確保するためにも、詳細かつ明確な記載が求められます。

賃金の決定方法では、基本給の決定基準を明記します。「年齢・勤続年数・能力・職務内容等を考慮して各人ごとに決定する」といった記載が一般的です。職能給、職務給、成果給など賃金体系が複数ある場合は、それぞれの内容を説明します。

諸手当については、支給する手当の種類と計算方法を具体的に記載します。たとえば「通勤手当は実費を月額5万円を上限として支給する」「家族手当は配偶者に月額1万円、子1人につき5千円を支給する」などです。

賃金の計算方法では、時間外労働や休日労働、深夜労働に対する割増賃金の計算方法を明記します。労働基準法では時間外労働25%以上、休日労働35%以上、深夜労働25%以上の割増率が定められており、これを下回ることはできません。

賃金の締切日と支払日は、「毎月末日締め、翌月25日払い」というように具体的な日付を記載します。支払方法についても「従業員本人名義の銀行口座への振込により支給する」などと明記してください。

昇給に関する事項では、昇給の時期や査定方法について定めます。「毎年4月1日に、前年度の勤務成績等を考慮して昇給額を決定する。ただし、会社の業績により昇給を行わないことがある」といった記載が考えられます。

退職に関する事項

退職に関する規定は、労働関係の終了という重要な局面に関わる項目です。特に解雇事由については、労働契約法第16条で「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする」と定められているため、慎重な記載が必要です。

自己都合退職については、退職の申し出期限を明記します。民法では2週間前の予告で足りるとされていますが、業務の引継ぎを考慮して「退職を希望する場合は、少なくとも1か月前までに届け出ること」とする企業が多く見られます。ただし、この期限はあくまで企業側の希望であり、従業員が2週間前に申し出た場合でも法的には有効です。

定年制を設けている場合は、定年年齢を明記します。「満60歳の誕生日をもって定年とする」といった記載が一般的です。また、高年齢者雇用安定法により65歳までの雇用確保措置が義務付けられているため、継続雇用制度や定年延長についても規定する必要があります。

解雇事由については、どのような場合に解雇となるのかを具体的に列挙します。「業務上の傷病により、療養開始後3年を経過しても治癒しない場合」「精神または身体の障害により業務に堪えられないと認められた場合」「勤務成績または業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない場合」などです。

また、懲戒解雇の事由も明確にする必要があります。「重要な経歴を詐称した場合」「正当な理由なく無断欠勤が14日以上に及んだ場合」「会社の機密情報を外部に漏洩した場合」など、客観的に判断できる基準を設けることが重要です。

退職手続きについては、退職時に返却すべき物品(身分証明書、制服、業務用パソコンなど)や、最終給与の支払方法などを定めます。「退職の際は、会社から貸与された物品をすべて返却すること。最終給与は通常の支給日に支払う」といった内容です。

まとめ

絶対的必要記載事項は、労働基準法第89条に基づき就業規則に必ず記載しなければならない項目です。労働時間・休憩・休日に関する事項賃金の決定・計算・支払方法に関する事項退職に関する事項の3つが該当し、これらの記載が不十分または欠けている場合、労働基準法第120条により30万円以下の罰金の対象となる可能性があります。

就業規則は一度作成すれば終わりではなく、法改正や社内制度の変更に応じて定期的に見直すことが大切です。厚生労働省が公開している「モデル就業規則」も参考になりますが、企業ごとに実態は異なりますので、自社の状況に合わせたカスタマイズが必要です。

特に労働時間管理や賃金計算、解雇事由の設定などは専門的な知識が求められる分野です。記載漏れや不適切な規定によるトラブルを未然に防ぐためにも、社会保険労務士などの専門家によるチェックを受けることをお勧めします。

労務に関するご相談はSalt社会保険労務士法人までお気軽にお問い合わせください。初回相談は無料で承っております。

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