解雇制限

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やむを得ず労働者を解雇しなければならない場合において、労働基準法には解雇の制限が定められています。今回は、労基法19条の「解雇制限」について解説します。


1.解雇制限(労基法19条1項)


次の期間は、解雇してはなりません。
① 業務上負傷し、または疾病にかかり療養のために休業する期間 + その後30日間
② 産前産後の女性が労基法65条の産前産後休業をする期間 + その後30日間

この規定は、①②のような期間中は再就職が難しく、労働者の生活に脅威をきたすことになるために定められています。


2.解雇制限の例外(労基法19条1項ただし書き)


解雇制限は、次の場合は適用されません。
① 業務上の負傷・疾病について、労基法75条の規定によって療養補償を受ける労働者が、療養開始後3年を経過しても治癒せず、使用者が同法81条の打切補償(平均賃金の1200日分)を支払う場合
② 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合

上記①については、労基法75条の療養補償を受ける労働者のほか、労災保険の療養補償給付を受ける労働者についても同様に取り扱われます(平27・6・9基発0609第4号)。
上記②の「天災事変その他やむを得ない事由」とは、天災事変のほか、天災事変に準ずる程度の不可抗力によるもので、かつ、突発的な事由を意味し、経営者として必要な措置をとっても通常いかんともし難いような状況にある場合を意味すると解されています。また、「事業の継続が不可能になる」とは、事業の全部または大部分の継続が不可能になった場合を意味すると解されています。


3.その他


上記2②の場合は、その事由について労働基準監督署長の認定を受けなければなりません(労基法19条2項)。認定は、「解雇制限除外認定申請書(様式第2号)」を解雇する前に所轄の労働基準監督署に提出することにより行います。
有期労働契約において、労働契約の更新がなく期間満了となる場合は、上記1①②の期間中であっても満了とともに労働契約は終了するため、原則として、解雇制限は適用されません。定年退職の場合も同様です(昭63・3・14基発150号)。
労基法19条のほか、労働関係諸法令により、解雇等の不利益な取扱が禁止されています。例えば、「国籍・信条・社会的身分(労基法3条)、性別・婚姻・妊娠・出産等(均等法5条、9条)」などの差別禁止事由、「育児介護休業の申出(育介法10条)」などの法律上の権利行使、「労基法違反の申告(労基法104条)、公益通報をしたこと(公益通報者保護法5条)」などの違反申告が挙げられます。
また、労働協約や就業規則において、解雇の制限を加える規定がある場合は、それに従います。

従業員とのトラブルを避けるため、就業規則を整え、周知することも重要です。

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