今回は社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入している事業所に毎年発生する
「被保険者報酬月額算定基礎届」(以下「算定基礎届」といいます)の提出について説明します。
算定基礎届は何のために提出するのか
算定基礎届は、原則として、毎年9月分から翌年8月分までの給与から控除する社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)について、賃金の改定(昇給・降給)などに合わせて、賃金に応じた適正な社会保険料とするために提出します。この届出内容に基づき、標準報酬月額が決定されることとなり、これを定時決定と呼びます。
算定基礎届による保険料の決定
算定基礎届による保険料の決定の仕組みとしては、原則として、4月・5月・6月に実際に支給した 報酬月額(割増賃金含む)の平均額を算出し、その平均額を切りの良い数字に丸め、まずは標準報酬 月額を決定します。標準報酬月額とは、社会保険料の計算あるいは社会保険の給付を受けるときの給付額の計算の基礎とするための金額です。
(例)報酬月額の平均額が290,000円以上310,000円未満の場合は、標準報酬月額300,000円となります。
このように決定した従業員各人の標準報酬月額に、保険料率を乗じて得た金額が従業員各人の社会保険料となり、随時改定に該当する場合などを除いて当年の9月分から翌年8月分までの社会保険料等の 計算に用いることとなります。
算定基礎届の注意点
① 対象となる4月・5月・6月の報酬は、4月・5月・6月勤務分の報酬ではなく、それぞれの月に実際に支払った報酬で見ます。したがって、翌月払いの会社では、4月・5月・6月の報酬とは、3月・4月・5月勤務分の報酬ということになります。
② 対象となる4月・5月・6月の報酬は、いずれも報酬支払基礎日数(報酬を計算する基礎となる 日数)が17日以上あることが原則です。したがって、17日未満の月があれば、報酬の平均額を算定する基礎からは除外します。すなわち、以下の図のようになります。
※ この例の場合は、5月を除外し、4月と6月の平均額から標準報酬月額を算出します。
③ 4月に途中入社したときなど、入社月の給与が日割り計算され、1カ月分の報酬が支給されなかった場合は、報酬支払基礎日数が17日以上あってもその月は算定対象月から除きます。
④ パートタイム労働者(※)については、4月・5月・6月の3カ月とも報酬支払基礎日数が17日以上あれば、3カ月の平均額をもとに標準報酬月額を決定し、報酬支払基礎日数が17日以上ある月が1カ月以上3カ月未満の場合は、17日以上の月の報酬の平均額をもとに標準報酬月額を決定します。 また、報酬支払基礎日数が3カ月とも17日以上ない場合は、報酬支払基礎日数が15日以上の月で平均額を算出し、標準報酬月額を決定しますが、3カ月とも報酬支払基礎日数が15日以上ない場合は、従前の標準報酬月額で決定されることになります。
※ 適用拡大の対象となる短時間労働者である被保険者を除く
⑤ 算定基礎届は、原則として7月1日現在、被保険者である人全員が対象となります。したがって、当年の6月30日以前に退職した人は対象になりません。また、当年の6月1日以降に資格取得をした被保険者、あるいは当年の7月・8月・9月に被保険者報酬月額変更届(随時改定)を提出する予定の被保険者などについても、算定基礎届(定時決定)の対象とはされません。
⑥ 賞与を年4回以上支給する場合は、原則として賞与ではなく通常の報酬とします。7月1日を基準として、前1年間に4回以上の支給がある場合は、前1年間に支給した全賞与の合算額を「12」で除して得た額を、各月の報酬に算入します。
いかがでしたか?給与明細を何となく見ている方、給与から毎月引かれている社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)は、金額の変わるタイミングがあります。そのタイミングの1つが算定基礎届(定時決定)です。給与明細は同じ項目の前月や前年と比較して見てみると、どう変わったのか分かりやすいですよ。